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京都地方裁判所 昭和36年(ワ)49号 判決 1966年4月01日

原告 佐藤武雄

右訴訟代理人弁護士 上田信雄

被告 林幹夫

右訴訟代理人弁護士 佐々木善一

主文

被告は、原告に対し、金二五〇、〇〇〇円およびこれに対する昭和三六年六月二一日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

本判決は、金八〇、〇〇〇円の担保を供するときは、仮りに執行できる。

事実

原告訴訟代理人は、主文第一、二項同旨の判決と仮執行の宣言を求め、その請求原因として、

「一、原告は、昭和三六年四月四日、被告との間に、被告所有の別紙目録記載の土地(本件土地)を、代金一、七五〇、〇〇〇円、手附金二五〇、〇〇〇円、所有権移転登記および手附金を控除した残代金支払の期日昭和三六年四月二〇日の約定の下に、買受ける契約を締結し、同日、被告に対し、手附金二五〇、〇〇〇円を支払った。

二、原告は、建売業者であり、本件土地を、その地上に建売住宅を建築する目的をもって、買受けたのであり、被告は、本件契約締結当時、このことを知っていた。

三、本件土地は昭和三六年八月一六日建設省告示第一七九二号を以て公示された京都国際文化観光都市建設計画街路1等3類第三六号線(東山国道)の買収予定用地の対象となった土地であって、右建設省告示のなされる直前の本件売買契約締結当時、既に京都市開発公社が、建設省国道工事事務所の要望に基いて、被告との間に、国道に予定されている本件土地の買受の交渉をしており、本件土地は、本件売買契約締結当時、建売住宅建築の目的に適合しない土地であった。

四、本件土地について、その後、昭和三六年五月一九日受付第一六四五四号原因昭和三六年四月一三日買収取得者京都市、昭和三七年三月二七日受付第七一五一号原因昭和三七年三月一六日売払取得者建設省の各所有権移転登記がなされている。

五、原告は、本件契約締結当時、本件土地が三のような土地であることを知らなかったので、本件土地を建売住宅建築の目的に適合する土地であると誤認し、そのために、本件契約を締結するに到った。

六、被告は右のことを知っていた。

七、したがって、本件土地売買契約は、要素の錯誤により、無効である。

八、仮りに、無効でないとしても、原告の買受の意思表示は、被告の詐欺によるものであるから、原告は、昭和三六年四月二〇日頃、被告に対し、取消の意思表示をした。

九、仮りに、そうでないとしても、「売買の目的物に隠れたる瑕疵ありたるとき」に該当するから、原告は、昭和三六年四月二〇日頃、被告に対し、契約解除の意思表示をした。

一〇、よって、原告は、被告に対し、右手附金二五〇、〇〇〇円およびこれに対する訴状送達の日の翌日である昭和三六年六月二一日から支払済まで年五分の割合による損害金の支払を求める。」

と述べた。

被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁として、

「一、原告主張の一および四の事実は認めるが、その余の事実は争う。」

と述べた。

証拠として≪省略≫

理由

原告主張の一および四の事実は被告の認めるところである。

≪証拠省略≫によれば、原告主張の二、三、五の事実を認めうる。被告本人の供述中右認定に反する部分は採用し難い。

上記認定によれば、被告は、本件売買契約締結当時、「原告は本件土地を建売住宅建築の目的に適合する土地であると誤認し、そのために、本件売買契約を締結するにいたった。」ということを、知りまたは知ることができたものと認めるのが相当である。

本件のように、土地の買主が、土地買受の目的に適合しない土地を土地買受の目的に適合する土地であると誤った判断をしたために、土地買受の意思表示をした場合、右意思表示当時、売主が右事実を知りまたは知ることができたとき、右買受の意思表示は錯誤により無効であると解するのが相当である。

よって、右手付金二五〇、〇〇〇円とこれに対する訴状送達の翌日であること記録上明らかな昭和三六年六月二一日から支払済まで年五分の割合による損害金の支払を求める原告の本訴請求を正当として認容し、民事訴訟法第八九条第一九六条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 小西勝)

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